ギークカアチャン

エンジニアとカアチャンの隙間に

赤ちゃんよくできてんな

赤ちゃん学を知っていますか?―ここまできた新常識 (新潮文庫)という本を出産祝いでいただいたので読んでいます。よくある育児書はこうすればいいああすればいいと書いてはいるものの、根拠がないのでいまいち腹に落ちない感があったのですが、この本は実験結果とそこから導かれた事実や見解を書いているので、とても頭に入りやすい。

 

てか赤子の成長メカニズムの解明って脳科学、神経科学とか認知行動学もさておき、ロボット工学や学習機構、人工生命などに広がる感じがすっげぷんぷんしてて結構おもしろい。

 

しかし「赤ちゃんよくできてんな」的な、生命の神秘としか言えないこともあったりして。

 

以下に忘備録。

 

赤ちゃん学を知っていますか?―ここまできた新常識 (新潮文庫)

赤ちゃん学を知っていますか?―ここまできた新常識 (新潮文庫)

 

ことば

  • 生後6ヶ月から8ヶ月の間に、形を認識できる能力が形成。
  • 生後間もなく、母国語と外国語の区別ができている。
  • 複数言語環境におかれると単一言語の習得と同じ早さで言語を習得する。日本のように単一言語の国だと赤子のときにテープを聴かせてもその後の環境的に厳しい。発音よりも伝えたいことを伝えられるか。
  • RとLの発音の聞き分けは生後6ヶ月ではできるが、生後10ヶ月だとできなくなる。母国語の音声ルールができてしまいRとLの違いを無視してしまうようになるから。
  • 基本言語が未熟な段階で異言語環境に入ると精神的、言語的成長が一定期間滞る。
  • 1歳半以降から、自分と他者が別の欲求を持っていることを認識。
  • ベビーサイン(?)を取り入れた方が会話能力の発達につながる。親子間のコミュニケーションもスムーズに。
  • 生後6wから「アー」「ウー」というクーイング、生後6ヶ月から「ア・ア・ア」「ダ・ダ・ダ」と単音節で発音
  • 哺乳類の中で人間だけ、おっぱいを吸うときに休憩する。(生存観点から不利。言語習得のためという見解がある。)
  • ノーム・チョムスキー「人間は言語を作り出す強固な本能がある」
  • 語りかけは子どもの主体性に沿う
  • 生後3ヶ月から喉が発達する。9ヶ月頃まで続く。
  • クーイングは鼻から抜けている音(ものを食べながら警告音を発することができる)
  • 赤子は耳で聞いたものを記憶していて、それを模倣しながら言葉を獲得する。話せないうちからはっきりした単語を聞かせてやることが重要。
  • 生後1歳半〜3歳にかけて、赤子は言葉の意味を属性の絞り込みすることで理解していく。すりこみの際の親の身体動作も影響する。
  • 赤ちゃん言葉をつかうことは言葉の学習に影響はない。ただ赤ちゃん言葉の方が赤子は好む傾向にある。

TV

  • 赤子はTVを見るとおとなしくなるもの。子守り代わりに使われがち。1人で長時間TVを見せる育児を続けると、赤子の表情が乏しく感情の表出がほとんどなくなり親子間のコミュニケーションがとれなくなる傾向がある。
  • 赤子の視覚システムは生後1ヶ月から3ヶ月で飛躍的に変化する。1ヶ月の時はただ漫然と見てるだけ、2ヶ月になると注視時間が長くなる。3ヶ月で複数のものを見比べられるようになる。
  • おとなしいのはTVの刺激にはまってるだけ。理解している訳ではない。子守り代わりに使うのではなく、親子で一緒に見て語りかけにつかうだけでだいぶ違う。
  • 三歳以降だとTVの影響も番組を選べばさほど問題なくなっていくとされている。

母乳

  • 「人間はもともと母性をもっているわけではない。状況とタイミングの中で芽生えてくるもの。」
  • カンガルーケアは、親子間の愛情を深めるのに役立つ。母親の精神的ケアに役立つ。また胎盤がはがれた瞬間からプロラクチンというホルモンが上昇するので、このとき赤子が乳房を吸うとさらにプロラクチンとオキシントンというホルモンが分泌され、母乳の出につながる。
  • プロラクチン:母乳を作る、オキシントン:母乳の流れを良くする
  • 母乳はすぐにでなくて2〜3日かかる。しかし赤子は3日分の水分と栄養をもって生まれてくる。この間母乳は出なくても赤子に吸わせ続ける事が大事。
  • よくやる母乳マッサージはオキシントンに影響。プロラクチンは分泌されない。頻回授乳がベスト。
  • 母乳授乳は身体の発達や感染症予防に役立つ。特に初乳は分泌型免疫グロブリンが多く含まれており、これは消化酵素に対する抵抗性が強いため腸粘膜に広がり、細菌、ウィルス、アレルギー源となる異種タンパク質の侵入を阻む。
  • また母乳には免疫調整や抗菌抗ウイルス作用の高いラクトフェリンも多い。
  • 母乳を飲むという動作で、赤子は乳房をパッキングする唇の筋肉と、乳房をかむための咀嚼筋が鍛えられる。母乳を飲まない赤子と比べ口腔器官の発達が劣る傾向がある。
  • 母乳は蔗糖ではなく乳糖なので歯垢ができない。母乳だけでは虫歯にはならない。離乳食で蔗糖を摂取しできた歯垢に母乳が付着するので虫歯になってしまう。
  • 蔗糖の摂取の制限、就寝前の歯磨き、お茶にはフッ素が含まれてるので一口でも飲ませる、などの対応で虫歯を予防する。
  • 卒乳は1歳から1歳半とされているが根拠はあまりない。WHOでは最低2年以上の母乳の継続をすすめている。
  • 母乳がでない、母乳を与えられないのは母親の責任ではない。一番大切なのは母乳かミルクかではなく、母子の絆を深め、愛情を持ってたくさんふれあうこと。

こころ

  • 生後2週間で目の前のものをとろうとする
  • 4段階のジェスチャーをしておもちゃの方をむくかで実験。「おもちゃの一方を軽くたたく」7ヶ月ぐらい「指差す」8ヶ月ぐらい「頭を向けてみる」10ヶ月ぐらい「頭は動かさず視線だけを向けて見る」1歳過ぎ
  • 生後6ヶ月で自分の映像を見て自分が動いていることを理解。
  • 5〜6ヶ月で1+1=2であるかどうかを感覚的に理解。
  • 生後2ヶ月から4ヶ月頃にかけてセロトニン神経によって睡眠覚醒リズムが形成され、昼起きて夜寝るようになる。睡眠のリズムが乱れると心身の発達に影響がある。

動き

  • アミン系神経系によって生後7,8ヶ月から始まる這い這いが、脳の機能的発達に重要な役割をもつ。
  • 這い這いの異常は脳の神経系の異常のサインとなる。正常な這い這いをしむけてやることが重要(膝から足の甲を床につける)
  • 二足歩行は1歳頃から始まる。
  • 生後2,3ヶ月は原始歩行期、歩くためのリズムが形成される。
  • 生後2ヶ月から1歳までは姿勢制御発達期、姿勢を保持するための神経系の発達を優先するため原始歩行は見られなくなる。
  • 1歳からは独立二足歩行の開始、リズム生成と姿勢制御が統合される。
  • 3歳頃から、複雑な筋活動パターンによる成人型歩行が完成。
  • 生後4ヶ月で目の前のものに手を伸ばす
  • 生後8ヶ月で予測的行動がみられる

知覚

  • 生後2ヶ月、視覚と聴覚が同じレベルで個別にはたらく
  • 生後4ヶ月、視覚の方が早く反応する
  • 生後5ヶ月から8ヶ月、視聴覚統合のため脳が大きく変化
  • 生後1歳以降、視覚と聴覚の統合が完成する
  • 這い這いに伴う移動経験が、奥行きや速度の感知などの視覚的機能を発達させる。

その他

  • アトピー赤子の20〜30%、生後6ヶ月までに発症することがほとんど。発症後小学校入学までに80%は症状が出なくなるとされている
  • 対策としては食べ物の除去、体や部屋を清潔にする
  • 早すぎる離乳食がアトピーの原因とする向きも。
  • 日本免疫学治療研究会では生後1歳前後まで母乳でokとしている。生後1歳から2歳までに腸が完成するので、母乳中のタンパク質以外は完全には消化できない。
  • 離乳食開始は6ヶ月以降赤子が食べたがるタイミングでok。アレルゲンとなりやすい食品の摂取は1歳からとされている。
  • アメリカの小児科学会では生後6ヶ月までは果汁を与えてはならないとしている。
  • SIDS乳幼児突然死症候群)は生後6ヶ月までに8割発生し、その後急激に減る。原因は不明とされているが、赤子は呼吸器がまだ未発達なため無呼吸に陥り覚醒が遅れるために死亡する窒息死ともいわれている。そもそも人間は脳が発達したため生物学的にも生理学的にも早産の状態で生まれる。呼吸器や消化器が一定の発達を遂げるのは生後6ヶ月頃。
  • うつぶせ寝、喫煙、母乳で育てることがでSIDSの発生確率を下げる。
  • 揺さぶられっ子症候群は赤子を激しく揺することで眼底出血や脳内出血など引き起こす。泣き止まない赤子についかっとなって揺さぶることで起きやすい。赤子の脳はパックに半分入った焼き豆腐の様な柔らかいもの。
  • ベビーシートは生後6ヶ月頃までは寝かせられるタイプのものがいいとされている。
  • 水分補給にイオン飲料を飲ませるのはあまりよくない。必要な場合は医師に相談する。基本、母乳、人工乳、水で問題なし。大人用のものは水中毒を引き起こしたり、食事の量が減ることによる栄養不足に陥るので注意。

 

参考URL:日本赤ちゃん学会